★近隣外交―挑発に振り回されまい
北京で丹羽宇一郎・駐中国大使の車が襲われた。
背景などは不明だが、一国の大使の身の安全が脅かされるなど、あってはならないことである。中国政府には、真相究明と再発防止を強く求める。
日中関係はいま重要な局面にある。香港の活動家らが尖閣諸島に上陸したのに続き、中国各地で反日デモが起きている。こんなときこそ、両国の政治家には冷静な対応を望みたい。
ところが、一部の政治家は逆に相手を挑発するかのような言動を繰り返している。
石原慎太郎・東京都知事が、都が購入を計画している尖閣諸島への上陸を求めている。実現すれば、中国との緊張がいっそう高まるのは明らかだ。
政府が、都の上陸申請を却下したのは当然である。
政治家の無分別な言動は、日本に限ったことではない。
韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の竹島上陸は、日韓両国を無用にきしませる行動だった。
李大統領は、竹島上陸の理由に、旧日本軍の慰安婦問題に進展がないことを挙げた。これについても、石原氏は「(慰安婦は)いやいやじゃなくあの商売を選んだ。日本軍が朝鮮人に強制して売春させた証拠がどこにあるか」と、韓国国民の感情を逆なでするような発言をした。
さらに松原仁・国家公安委員長は「(旧日本軍の関与を認め、謝罪した93年の)河野官房長官談話のあり方を閣僚間で議論すべきだ」と語った。
非はまず李氏にある。だが、こんな挑発の応酬が両国の国益に資するとは思えない。
(>>2-3へ続く)
asahi.com 2012年8月29日(水)付
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